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自筆証書遺言書保管制度と公正証書遺言

自筆証書遺言書保管制度とは

自筆証書遺言書保管制度とは、これまで未発見リスクや隠ぺい・変造リスクの高かった自筆遺言書を法務局で保管してくれるという、令和2年に始まった制度です。

単に法務局が自筆遺言書を保管してくれるだけではなく、遺言者が死亡したときには、遺言者の指定した人に通知が届いたり、これまで自筆遺言の執行の際に必要だった家庭裁判所による検認手続きが不要だったり、自筆で遺言書を作成しようと考える方にとっては非常に画期的な制度です。また、日付や署名捺印など外形的な不備がないかも法務局で確認してくれるため、形式的な不備で遺言が無効になるリスクもなく、これまでの自筆遺言と比べると格段にメリットの多い制度と言えます。

 

自筆証書遺言書保管制度について|法務省

 

公正証書遺言との違いは?

では、確実性の高い遺言として知られている公正証書遺言との違いは何でしょうか。

 

自筆証書遺言書保管制度が優れている点

  • 手数料が安い。

公正証書遺言では財産の額に応じて安くて数万円の公証人手数料が発生し、専門家に依頼する場合には追加で数万円~数十万円の専門家報酬が発生します。それに対し、自筆証書遺言書保管制度では、遺言書の保管申請が1通につき3,900円と安い手数料で作成することが可能です。

  • 遺言の内容が他人に知られない。

自筆証書遺言書保管制度は遺言者が自身で作成した遺言書を、法務局で形式上のチェックを受けて保管する制度のため、具体的な内容について遺言の有効性を担保してもらえるものではありません。そのため、法務局の担当者以外に遺言の内容を知られてしまう恐れはなく、なるべく人に内容を知らせずに遺言を作成したい方には向いている制度です。一方で公正証書遺言では証人が二人必要で、少なくとも証人二人と公証人には遺言の内容を詳しく知られてしまうことになります。

 

公正証書遺言が優れている点

  • 確実性が高い

公正証書遺言は作成の際、公証人と証人二人の前で遺言者の意思確認を行いますので、意思能力の有無で後日争われるリスクが低いと言えます。自筆証書遺言書保管制度では、遺言者が自身の意思でその遺言を作成したかどうかまでの確認は行われませんので、ケースによっては遺言者の意思とは異なる内容の遺言書を法務局で保管するために悪用される可能性もゼロではありません。

また、公正証書遺言では公証人や専門家が事前に内容を確認して作成しますので、内容の矛盾などにより法的に無効になってしまうことがありません。

 

  • 自筆するのは名前だけでよい

公正証書遺言では、事前に内容が印字された公正証書を公証人が遺言者の前で読み上げることで内容確認をします。遺言者が自分で書くのは、署名の部分だけです。

これに対し、自筆遺言では財産部分を除いてすべて遺言者が自筆で作成する必要があり、高齢の遺言者にとっては負担が大きい方法と言えます。

 

  • 添付書類が少なく、遺言執行が容易

自筆証書遺言書保管制度では、遺言者が亡くなった後、相続人が遺言書情報証明書を交付請求するために、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、住民票が必要です。(もしくは法定相続情報一覧図の写し)

これに対し、遺言執行者の指定された公正証書遺言がある場合には、被相続人が亡くなったことが分かる戸籍謄本、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票、相続を受ける相続人の戸籍謄本、住民票などで済みます。相続人間で対立がある場合に、他の相続人の戸籍謄本や住民票を取得することは容易でないことがほとんどです。遺言者が亡くなった後、速やかに遺言を執行するためには、公正証書遺言が優れています。

 

結局、どちらを選べばよいか

自筆遺言証書保管制度と公正証書遺言にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらを選択すべきかは人ぞれぞれです。

当事務所では公正証書遺言の作成支援のみ、受け付けております。

両制度のメリット・デメリットをご検討いただき、確実性の高い公正証書遺言を残したいと思われた方は、お気軽にご相談ください。